去る2月28日(金)、大垣市のドリーム・コアにて開催しました「オープンデータ・カフェin大垣〜コミュニティ・オーガナイジングで地域を巻き込む〜」について、ご報告致します。
講師にCommunity Organizing in Japanのコーチである柳澤 龍(やなぎさわ・りゅう)氏を迎え、「コミュニティ・オーガナイジングの最先端の手法」についてご紹介頂きました。本来は、2日3日で行われる研修メソッド(!)だそうですが、今回は3時間で、その一部を体感!
今回、オーガナイジングのためのリーダーシップ実践について学ぶのは、以下の2つ。
1.
ある目的に向けた集合的なアクションの基礎となる、意図を持った関係を構築する方法
2.
セルフ(なぜ自分がリードすることを思い立ったか)、アス(なぜともに行動したいのか)、そしてナウ(どのように行動するのか)という3つのストーリーを明確に言葉で表現する方法
導入:「ボイコット」の語源って?
ウェールズの大地主で小作人に土地を貸していた「ボイコット」。
その土地ではジャガイモが育てられていたが、ある年、不作となってしまった。そのため小作人は値下げを訴えたが、ボイコットはそれを許さなかった。
ボイコットの態度を受けて、人々はまちぐるみでボイコットを無視。意地悪をし続け、挙句ボイコットはイギリスの実家に帰ったという。
このエピソードから分かるのは、実際弱い農民が、全員の力で権力に対抗することで、社会を変えて行くのだ、ということ。
これが、コミュニティオーガナイジングに繋がる、というわけです。
続いて、視聴:NHK 「クローズアップ現代」にて取り上げられた「コミュニティオーガナイジング」の回。
ハーバード大学、マーシャル・ガンツ氏の講座を受ける人々。
「活動が広がらない」悩める現場
宮城県南三陸町で地域の漁業体験ツアーを行っているSさん。企画から実施まですべて自分で行っているが、共感して一緒に活動してくれる人がいなくて焦り。
▷リーダーの多くは全てを抱えすぎている。回りを巻き込み、促す事が大切。自分が全面に出るのではない。信頼を結び、感心をもっていればいい。一人一人がつながれば、大きな力になり、雪の結晶のような関係になる。
「物語を語る」
障害のある人の就労支援をしているHさん。自治体の視察が毎日のようにあり、理念には賛同してくれるが、実際に職場の提供をしてくれることはない。
▷賛同を得るには、心に訴えかける「物語」が必要。「Self、Us、Now」を語ること。ある人の訴えが、「理念」ではなく、「感情」に響いた時、他人の心は動く。すべては、自分の物語を語る所から始まる。体験を共有する時間を作ることが大切。
映像を見たあとは、柳澤氏と今日のNorm(ルール)を参加者と作成。参加者からは、次のようなアイデアが出ました。
・互いの学びを支え合う
・発言するときは手をまっすぐ挙げる
・どんな意見も否定しない
・「だから」を言わない
また、ルールを守るための行動(いわゆる罰ゲーム)も設定。
・語尾に「ぽ」をつける
ルールを設けることで、参加者を身近に感じ、よりワークを円滑に進めることが可能になります。
1.コミュニティ・オーガナイジングの全体像
リーダーシップとは?(参加者の意見)
・ピラミッドをつくっている 管理がボス
・自分で考えて行動を発揮できる
・チームが困った時に決断できる
▷コミュニティ・オーガナイジングにおける「リーダーシップ」とは?
リーダーシップ=動詞として使う。
先の見通し立たない不確実な状況の中、人々が共有した目的を達成できるようにする責任を引き受けること。
▷オーガナイジングとは?
問題に直面する当事者の持つ資源を総動員して問題を解決し、解決した状態を維持すること。変革(実際の結果)をもたらすために、人々(「同志」)にパワー)ストーリーと戦略)を備えさせること。単に問題を解決する事ではない。
※同志…ある目的を達成するために「ともに立ち上がった」人々のこと。
2.リーダーシップの5つの実践
以下2-1〜2-5の解説は、(図1)中の「リーダーシップ」欄の1~5についてです。
無秩序(な状態)
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リーダーシップ
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組織化(された状態)
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消極的
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ストーリーの共有1
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積極的
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分裂
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関係に基づいたコミットメント2
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団結
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漂流
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明確な構造3
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目的
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受け身
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創造的な戦略4
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自発性
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何もしない
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効果的な行動5
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変化
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(図1)
2-1.共有ストーリーを創る
オーガナイジングは、「パブリック・ナラティブ」という物語の中で表現される共有価値に根ざしている。パブリック・ナラティブは、どのようにストーリーを通して価値を伝え、世界を変えていくのかに欠かせないモチベーションを引き出すかというもの。人々はストーリーを語る事で、感情を伝え、聞き手の道徳的資源(勇気・希望・連帯)を呼び起こす事が出来る。
2-2.人間関係に基づいた共有コミットメントを創り出す
オーガナイジングは(人と人の)関係性と、ともに活動して行くことへの双方のコミットメントを基礎としている。
2-3.共有構造を作る
リーダシップチームの構造は、効果的な各地でのオーガナイジングを生み出すのを可能性にし、各地のアクションを都道府県、国、さらには地球規模の目標へと統合することも可能にする。
2-4.共有戦略を創る
広い価値観を基盤にしていても、効果的なオーガナイジングのキャンペーンは、それらの価値を(具体的な)行動に変え、創造的な討議がもたらされるよう、具体的な戦略的目標に集中することを学ぶものである。
2-5.測定可能な、共有されたアクションを創る
例えば、目標達成に向かう進捗状況を定期的に報告することは、フィードバック、学びと適応の機会を生み出す。個人、チーム、キャンペーン全体が、ゴールに向かってどのくらい進展したのかを確認するための透明性が担保されるアクションを創ることが大切。
2-6.コミュニティオーガナイジングの理想的な形=「雪の結晶」形
2-7.オーガナイジングを学ぶ
オーガナイジングとは実践であり、「する方法」である。自転車に乗ることと同じようなもの。
3.パブリックナラティブ 物語の方法論
If I am not for myself, who will be for me?
(もし、私が私のためにあるのでなければ、私は誰なのか?)
When I am only for myself, what am I?
(私が私のためだけにあるのなら、私は何なのか?)
If mot now,When?
(そして、もし今でなければいつなのか?)
-ラビ・ヒレル、1世紀のユダヤ教の賢人の詩
「自分のために立ち上がることが最初の第一歩だが、しかしそれでは十分ではない。あなたと共に立ち上がるコミュニティを構築しなければならない。そしてそのコミュニティを、今、ともに行動するよう動かさなければならない。」ということ。
パブリック・ナラティブを創ることは、リーダーシップの実践に置ける3つの重要な要素を統合する方法です。
ストーリー/戦略/アクション
私(セルフ)・私たち(アス)・今(ナウ)のストーリーを結びつけるには、
共通の織糸を価値観に見つけることが肝要。
▷人間は物語に囲まれて生きている
父、母、祖父母、先生、家族、親族、同級生、様々な人とのことをについて、誰もが語れるはず。
▷感情と価値観の関係
「感情」を経験できなければ選択するための「価値観」を持てない。
▷ナラティブの構造
・筋 ・主人公 ・モラル(教訓)
▷なぜ人は、予想もしない事に引き込まれるのか?
・私たちの人生は不確実な状況に直面する事がたくさんある。
・切り抜ける学びを得る源は、他の人々の話。
・人は全員過去から学び、未来を創造するために選択をする事が出来る。(VS習慣から行動=踏襲)
▷パブリック・ナラティブを構築するためのカギとなる3つの要素:
困難—選択—結果
「パブリック・ナラティブ」とは、「ストーリー・オブ・セルフ」、「アス」、そして「ナウ」(図2)を統合するものなのだそう。
☆ストーリー・オブ・ナウ・・・どのような緊急の問題が話者を突き動かし、コミュニティのために行動をとることになったのかについて語るもの。話者のコミュニティが、今、行動することを要求する問題・希望、話者が人々の参加を呼びかける行動を選択することに焦点を絞る。
☆ストーリー・オブ・アス・・・コミュニティをつなぐ共有価値について語る。その価値観は危機に瀕しているかもしれないし、希望の源かもしれない。特定の人々に関わるイベント、瞬間、出来事、言葉の物語。
☆ストーリー・オブ・セルフ・・・コミュニティの価値観もそのカギとなる選択の瞬間を通して表現される。コミュニティができた瞬間、危機の、勝利の、悲劇の、回復の、ユーモアの瞬間。話者がリードしようと思い立った価値観について語るもの。
ここで、視聴:バラク・オバマ氏の 2004年民主党大会基調演説
▷演説の「ストーリー」の流れ
祖父、祖母の生い立ち、200年前の民族について~父、母、自分の生い立ち〜今(州、同胞の現状など)を「ストーリー・オブ・セルフ」「アス」「ナウ」で語っている、見事な演説。
参加者全員で、オバマ氏の演説から、困難、選択、結果について、それぞれのストーリーに「核」があるということを見いだしました。
4.共有価値を創造する「ストーリー・オブ・セルフ」の体験
最後に、他の人たちに自分を理解してもらえるような「ストーリー・オブ・セルフ」を語るワークを実践。まず、CCL取締役・須藤氏に「ストーリー・オブ・セルフ」を語ってもらい、ご自身が現在「主体性の創造」について研究しているそのルーツについて、生い立ちから迎えた岐路、選択の場面を2分で披露いただき、優れた見本を拝見しました。
続いて、参加者もワークショップを実践。今回は、4人一組で、自分が「困難」を乗り越え、「選択」して行き着いた「結果」について「ストーリー」として語り(参考:図5)、その後、1人のストーリー(各2分)に対し、3人がコーチング(各3分)する、というワークを行いました。
▷「コーチング」について:ポジティブな意見と、建設的で批判的でもある意見のバランスをとることを覚えておく。また、曖昧なコメント(例:「本当に素晴らしいお話ですね!」)は避け、次の5つのポイントを押さえて行う。
1. 困難:ストーリーの語り手が直面した困難とは具体的に何であったのか?その困難は生き生きと、絵を描くように語られていたか?
2. 選択:それぞれの困難に対して、はっきりとした選択は示されたか?その選択のストーリーでどのような気分になったか?
3. 結果:それぞれの選択からどのような具体的な結果が引き起こされたか?その結果から何を学ぶか?
4. 価値:語り手の価値は何であり、どこから来ているのか分かったか?そのストーリーに何を感じたか?
5. 細部:細部がよく描け、カラフルな色のついたイメージを伝える場面はストーリーにあったか?
今回は4人のグループが2つ作られ、1つのグループのある参加者さんは、“今まではお客さんの言う通りに開発を行い、商品を納品するだけで、定時で帰宅する毎日を送っていたシステムエンジニアさんが、「オープンデータ」に出会い、「人のためになる開発」ができると知ったことをきっかけに、以後積極的にイベントに参加するなど、自らアクションを起すようになった。”というストーリーを語ってくださいました。
今回のグルーピングでは、みな顔見知りの方々で、初対面のメンバー同士の経験とはまた異なったものだったとは思いますが、ワークを終えた参加者の皆さんの感想では、既に知っている相手の「意外な一面」を知ることが出来たり、こういった自分を語るチャンスができたからこそ知ることができたエピソードがあったりして、面白かった、という意見が出されました。本来ならば2泊3日の膨大なワークがあるプログラムですが、そのメソッドを少し体験するだけでも、十分身になるひとときを過ごすことができたカフェでした!
長文の報告となってしまいましたが、ご興味のある方はぜひ、以下もご参考になさってください!
※NHK「クローズアップ現代」の様子
※コミュニティ・オーガナイジングについて
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文中の図は、コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン発行、マーシャル・ガンツ氏著
「リーダーシップ、オーガナイジング、アクション」(2014年1月27日初版)から引用させていただきました。
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