先月の3月21日に秋田県五城目町でいなかソン第2弾!「地域の宝を掘り起こせ!第一次産業×ITで地域を輝かせる!~農家ソン~」が開催されました。
A、Bという2つのプログラムに分け、AはIT技術者やデザイナー向けに、Bは企画業務やまちづくり関係者向けとしそれぞれに関連したワークショップや講演会を開催されました。プログラムの具体的な実施項目については以下の通りです。
これからの2日間様々なアイデアワークを行う上で必要になってくる情報のインプット。そのために五城目という町がどのような町であるのかを実際に街を歩いて学ぶ「まちなかフィールドワーク」を行いました。
案内役は五城目町役場の柴田氏です。訪問先は
- 道の駅五城目
- 五城目朝市ふれあい館
- 福禄寿酒造
- 北宇商店
②「農業の現状と松橋ファームの取組」
松橋ファームは秋田県大潟村で家族経営の農業を営む農家で、お米や野菜の生産と販売を軸にするほか、福禄寿酒造と共同で「農家がつくる日本酒プロジェクト」や、東京丸の内での「松橋ファームナイト」、阿佐ヶ谷での「収穫祭」など、作る人と食べる人、そして売る人それぞれの顔が見える農業を目指し、それぞれをつなぐためのコミュニティーづくりにも積極的に取り組まれています。講演の中で松橋氏はCSA(Community Supported Agriculture)という考え方を提示し、今後農業を行っていく上で「地域(コミュニティー)に支えられた農業」が大事であると説明。松橋ファームがこれから行っていくべきCSAを紹介しました。
- 物理的な距離よりも精神的な距離に重みを置く。
- 家族構成やライフスタイルに合わせて頻度や量感をコントロールする。
- 実際に食べてもらう機会を作りながら語り合う機械をつくる。
これらの成果として前述したようなさまざまな取り組みがあるとし、「農家としての生活を成り立たせることで農業の世界に貢献していきたい」と述べ講演を締めました。
③「地域活性化アイデアソン(ワークショップ)」
「五城目町の第一次産業を盛り上げるためにどんなサービス・商品が必要か」と題して、参加者がまち歩きで収集した情報をもとにアイデアワークショップを行いました。ファシリテーターは株式会社CCLの原亮氏。
最初にアイデア出しを行うツールとし「ブレインストーミング」を紹介、そのための心構えとして「意見のプラスの面を見つけてそれを膨らませていく」ことと「実現可能性については後で考え、とにかく些細なことでも量を出していく」ことの大切さについて説明しました。それを基本とし、まずは「五城目の農産物、加工物の魅力を増すための必要なアクションを考える」をテーマにしたアイデアワークで、アイデアを膨らませるための用紙(マンダラアート)を用意して、アイデアを書き込んでいく作業を実施しました。その後、グループ内で結果を見せ合うことでアイデアの共有も行いました。
次に「
五城目の農産物、加工物の魅力を壊すための必要なアクションを考える」と題して、まずは参加者に「どんなことをすれば五城目の魅力を失わせることができるのか」という案をA4の紙一枚に可能な限り書き出してもらった後、その一つ一つの案の「逆」の表現を書いてもらいました。
このようなことをする理由として、まったく経験のない異分野のテーマでアイデアを考えるときに最初から肯定的なアイデアを出すのが難しい場合が多く、その時は否定的なアイデアから入り、量を出し、最後にそれを逆にすることで良質なアイデアが生まれる確率が高くなると説明しました。
最後の締めのワークとして紹介されたのが参加者同士がペアを組み、お互いのアイデアを見せ合い意見を出し合う「ペアブレスト」、そして参加者全員がそれぞれいいと感じたアイデアに印をつけていく「ハイライト法」と呼ばれる手法です。
ペアブレストでは通常のブレスト同様、相手の意見を否定せず良いところに目を向けるよう説明し、5分間のペアブレストを合計3回実施しました。ペアブレスト後は「アイデアシート」と呼ばれるシートにアイデアを一つ一つまとめそれをハイライト法により全員が評価を実施し、最終的に10個以上印がついたアイデアを考案者自身に発表してもらいました。
交流会では五城目の名物「だまこ鍋」が振舞われ、また各種地酒も用意されました。また参加者の中にフルート演奏を行う方がいたり、個人で地酒を持ち込む方もいるなど終始盛り上がりを見せていました。
⑤ITサービス試作品開発ワークショップ(ハッカソン)
ハッカソンとは「ハック」と「マラソン」を掛け合わせた造語で技術者たちが自分たちが持つ技術やアイデアを競い合い、サービスやアプリケーションのプロトタイプを開発するというもので短時間に集中的に行うのが特徴です。今回のハッカソンは夜通し施設内での作業ができないため各自宿泊先や自宅に戻り作業を行っていただきました。
翌日は職員室を作業場として提供、ウェブアプリケーションを作る人、スマートフォンアプリを作る人、デバイスを活用したプレゼンテーションを作る人など内容はさまざまで、15時の成果発表会に向けて各自集中して作業を行っていました。(成果発表は後述の「9.成果発表会」)
⑥地域活性化アイデアソン(発展版)
この時間は「五城目ステキブラッシュアップ計画」と題して、前日の街あるきで撮影した写真を活用したワークショップを行いました。具体的には以下のような流れです。
- 体験の追加
- 魅力の整理
- アイデアスケッチ作成
まず「1. 体験の追加」では、前日に写真に収めた場所やモノ以外に魅力に感じたことを手書きのイラストで表現する作業です。その後、その魅力がだれにとってどんな魅力があるのかを考える時間へと移り、「多分こうなのではないか」という自分なりに感じたこと、考えたことを付箋に書きだしその付箋を写真の上に貼り付けてもらいました。
最後に、書き出された魅力を際立たせるためにどういうことが必要なのかを考えるペアブレストを行い、具体的なアクションやサービスに落とし込むためアイデアシートにまとめる作業を行っていただきました。
⑦地域観光セミナー&ワークショップ | |
「何故、ニセコには外国人観光客が来るのか。」
これまでのBUSMAP、宿泊メニュー等のやり方を変え、周辺飲食店の情報を電子的に知ってもらう様にすることなど様々な取り組みが紹介され、そしてニセコでの3年間の取り組みが、実際に他の地域とどんな差が生まれたのかを実際のグラフにして分かりやすく説明して頂きました。
釼持は「先ずは外からの人材が必要だが、最終的に大事なポイントは、経営資本のやり方を覚えた地域の人材がどれだけいるかが重要になる。」と、地域の人材の重要性を述べました。日本の現状は、世界の観光に比べて「情報」に関しては15年ほど遅れているそうで、地域の情報を自分で調べられない人は、自分の日程に合わせて、旅行を組み立てられないのが現状だそうです。
次に「何故地域は今観光が必要なのか?」という話題にうつり、現在日本では地域人口と所得の減少、外出型余暇時間の減少、地域内消費額の減少の問題があること、そして日本の年間の収入減少のグラフや極端に減ったレジャーの話が紹介されました。
では、どうやって観光振興を企てるか、これからの「交流時代」の観光をお話頂きました。重要なポイントは、
- 人の集まっている場所を見つける
- なぜ集まっているか。その魅力を把握する
- 今来ている人に「もう一度来てもらう」
- 「隣まで足を延ばす」
- 「長時間滞在する」
- 「友達を誘ってくれる」
- お客様が「来ない、来れない理由」徹底排除する
これらの方策が必要となってくるそうです。そして、現在どんな「農林観光」の企画が成功しているのかを、写真を見せながら説明して頂きました。また、西海岸の秋田といわれているシアトルや、ラベンダー観光事業の例、アジア最大の食品展示会での日本の酒造が作った木桶の販売の例などもありました。
では日本ではどのように売ることが出来るのか?それは「マスメディアに知ってもらうこと」が大事であり、そのためのメディアガイドを作ることだと述べ、セミナーを締めました。
後半はワークショップです。3チームに分かれ、ワークショップ作成が行われました。
・メディアガイド作成チーム
写真を使い、五城目としてマスメディアに紹介すべきものや、新聞テレビ局にどんなものを見せたら食いつくかを考え作っていきます。(成果発表は後述の「9.成果発表会」)
・他の2チーム
午前中に行ったアイディアワークの紙を元に、実際にどんな人をターゲットにし、どんなサービスにしていくかを考えていきました。(成果発表は後述の「9.成果発表会」
⑧成果発表会
セミナー&ワークショップでのグループワークと、ハッカソンでの成果物を発表者ごとに5分でのプレゼンテーションです。前者は合計3チームが発表しました。
1チーム目:朝市という素材を使った観光ツアープログラム
現状の問題点としてツアーは毎年継続しているが人がなかなか集まらないという課題を、どうしたら収益につながるものに育てられるのかというところを考えたとのことです。そこで、新しい観光ツアープログラムとして朝市を見てものを買うだけでなく、山菜の採取やそれらを街なかで販売したり、料理教室で調理して食べるなど、従来の観て買う以外の体験が可能なプログラムを考案。課題はまだまだあるものの、それも含めて新しいアイデアを得ることができたと感想を述べました。
2チーム目:ストーリーで売るメディアガイド
五城目がどれだけおもしろいストーリーを持つ町なのか、というところに目をつけて恋地とラズベリーという2つのキーワードから五城目を「愛を育む場所」と考え、秋田市内のカップルをターゲットにデートプランを提案しました。古民家や自然、木苺農園、農家レストランなど観て、買って、食べて楽しい場所を写真を使って紹介し、カップルが行ってみたいと思ってもらうストーリーを組み立て毎年2回以上来てもらうことが目標だと発表しました。
3チーム目:木苺農家に木苺を本気で作ってもらうための”儲かるストーリー”
木苺の生産量日本一を誇る五城目町ですが、実際ケーキやジャムなど加工食品として出ているがあまりスーパーで見かけないことや、天候に左右されやすくまた収穫も大変という課題があり、さらに農家も片手間で作ってるところが多いという現状を指摘。そこで生産者に木苺を本気で作ってもらうための儲かるストーリーを3つ発表しました。「市場成長性の高さ」、「利益率の高さ」、そして「生産効率の高さ」です。この3つのポイントは生産者を納得させるために、具体的な数字を使ってまとめられていました。また生産の側面以外にも生産したものを消費量の高いロシアに輸出するなど国内に留まらない内容になっていました。
1.松橋翔さん
松橋さんのテーマは「農業×SNS」。作成したアプリは、事前に農場の場所とその場所に行った時に投稿する文字をアプリに登録しておき、GPSから取得した現在位置と比較し、農場に行っている事がわかると自動でSNS(ツイッター)に農作業をしている事を発信できるというものです。デモでは実際に文字がツイッターに投稿されるところを見ることができました。
2.西本浩幸さん
西本さんのテーマは「だまこマン」。イラストなのにインターネット上で検索してもなかなかだまこマンのイラストが見つからない点を疑問に思い、写真と文字をアップロードするとだまこマンが吹き出し付で自動で「スタンプ」され、入力したメッセージをしゃべっているかのような写真ができあがるアプリ(=だまこマンフォトメーカー)を制作。デモでは選んだ写真にだまこマンと吹き出しが合成される様子を観ることができました。
3.熊谷直央さん
熊谷さんは360度の景色が撮影できる特殊なカメラを利用し、街歩きで撮影した写真を自分のGoogle ストリートビューに投稿するデモです。公式のGoogleストリートビューに掲載されるためには審査が必要とのことで五城目町は現在でもGoogleマップ上では見ることができないのですが、熊谷さんの専用ページで撮影した作品を閲覧できるとのことです。
4.渡部健太さん
渡部さんは町に住む高齢者を「町のことを熟知した観光案内人」と捉え、ガイドブックには載っていないレアな観光をしたい観光客が自由に案内人を選べるサービスを制作しました。このサービスではユーザ(観光客、案内人)の管理や観光案内の予約管理、会計管理、そして街のPRや案内人の紹介などができるようなものを目指し、今回のプロトタイプではログインし、実際に案内人を予約するところまでを制作したとのことです。
5.中河昌士さん
中河さんはご自身も農家をやっているということもあり、1農家あたりの耕作面積の増加により田圃の巡回等に時間(数時間かかる例もあるとのこと)と費用がかかってしまっているという問題を取り上げました。そんな中、カメラ機能がついたスマートフォン(以下、スマホ)の登場により田圃に電気がなくても電波とバッテリーさえあれば使うことができるスマホの利点を挙げ、スマホを田圃に設置することにより水位、稲やあぜの雑草の様子を遠隔で確認することが可能なサービスを考案。これにより、1日2回ほど行う巡回作業も省くことができるようになるのではないかと説明しました。
以上、全部で8つのアイディアがうまれました。皆さん完成度が高く、どれも実現可能で面白いものばかりです。今回は、地元の方の他に、秋田、東京、会津、仙台などから来た方が参加されていました。初めてお会いする方々ばかりでしたが、その分違った見方で新しいアイディアが生まれ、それを形にしていく楽しさが体験でき、熱い二日間を過ごせたと思います。
下記は、今回のイベントページと、前回のいなかソンブログです。よろしければこちらもご覧ください。
下記は、今回のイベントページと、前回のいなかソンブログです。よろしければこちらもご覧ください。
今回のいなかソン、イベントページ
前回いなかソンブログ
http://opendatacafe.blogspot.jp/2013/11/in_22.html
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